知的財産法 後期第4回
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今回の設問
前回の第3回の授業では、商標の類似について考えてみました。商標としての「軽井沢高原ビール」と「軽井沢浅間高原ビール」とを比較してみました。では、「軽井沢高原ビール」の缶のデザインが公知だったとします。「軽井沢浅間高原ビール」の缶は、意匠登録できるでしょうか。
ここでは、意匠の類似判断の方法を学ぶとともに、商標の対比との違いを学びます。
https://gyazo.com/10160518f0749f292d32a96e869664cf
第2回目の授業で、意匠の登録要件について学びました。
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意匠登録の要件
工業上利用できること
新規性があること
新規性喪失の例外
創作非容易性
意匠公報に掲載された先願に係る意匠の一部と同一又は類似の意匠でないこと
公序良俗に反しないこと
出所の混同を生じないこと
物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠でないこと
先願の意匠であること
そして、ビール缶に付されるラベルのデザインも意匠法の保護対象とされます。ラベルのデザインも
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ですので、出願されれば、上記のような登録要件が審査されます。
ここで、新規性と先願主義の判断には「意匠の類似」という概念が出てきます。
新規性
意匠登録の要件として意匠法第三条には、以下のようき規定されています。
第三条 工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
一 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二 意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠
三 前二号に掲げる意匠に類似する意匠
先願主義
第九条 同一又は類似の意匠について異なつた日に二以上の意匠登録出願があつたときは、最先の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。
そこで、「類似する意匠」とは何か、どのように判断するのかが問題となります。
まずは、この例で考えてみましょう。
皆さんは、下記の例は類似していると思うでしょうか、それとも非類似と思うでしょうか?
考えてみましょう。
例題1
スチーム調理用蓋付きトレー意匠登録1616424 (左)と右の商品との類否
https://gyazo.com/ec5195edab5475418b97a620baac41bf https://gyazo.com/79c42149537af44497172f2649674772
https://gyazo.com/48553298fdb13e0dd52996445b4abeeahttps://gyazo.com/cd4f916f94be5512f6dc0d33596ae912
https://gyazo.com/f6e02b0768b8387adb37012323491224
https://gyazo.com/9c87a4014a7e97347c905d8a7d183a9b
https://gyazo.com/57f5a3f32c86e1826501c016c3751982
https://gyazo.com/828080414d902d0abc43279060ceee05https://gyazo.com/1f32f01fdded492b1b6b1d9414f0dab2
例題2
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https://gyazo.com/16e4b36700ad2aa737a45cd0aba3db5e
https://gyazo.com/2b67994993c96905c474df5fb20496cc
https://gyazo.com/edcadd3f228cf34fedda3ecbd2cfc5eb
https://gyazo.com/827b5524b3f302c78f084bcd9dd99994
https://gyazo.com/cd344088e2946a99ada858ee5f7acd1d
https://gyazo.com/301354860eb8d628cfac79cde96864ce
ではこの例ではどうでしょう?
これは侵害事件での問題ですが。
https://gyazo.com/38f6110159a072b04858b31abc868124
特許庁 意匠制度120年の歩み 第5章 デザインの新たな展開より p186参照
意匠の類否判断についての特許庁審査基準
https://gyazo.com/f4861cbb1077a6c35f062517e02fd0d0
22.1.3.1 意匠の類否判断
意匠の類否判断とは、意匠が類似するか否かの判断であって、需要者(取引者を含む)(判断主体に関しては 22.1.3.1.1 を参照。)の立場からみた美感の類否についての判断をいう。
22.1.3.1.1 判断主体
意匠の類否判断において、判断主体は、需要者(取引者を含む)(意匠法第24条第2項。同規定でいう「需要者」とは、取
引者を含む概念であることから、ここでは「需要者(取引者を含む)」とする。)であり、物品の取引、流通の実態に応じた適
切な者とする。
新規性の判断時における意匠の類否の判断主体については、条文上は明確に規定されていないが、
登録意匠の範囲を規定している意匠法第24条第2項において「登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。」と規定されていることから、新規性の判断における意匠の類否
意匠の類否判断は、もとより人間の感覚的な部分によるところが大きいが、その判断を行う際には、意匠創作に係る創作者の主観的な視点を排し、需要者(取引者を含む)が観察した場合の客観的な印象をもって判断する。
https://gyazo.com/bed3eba299b13058f5f7b16f4321becf
22.1.3.1.2意匠の類否判断の手法
意匠審査において、類否判断は次の(ア)~(オ)の観点によって行われる。
(ア)対比する両意匠の意匠に係る物品の認定及び類否判断
(イ)対比する両意匠の形態の認定
(ウ)形態の共通点及び差異点の認定
(エ)形態の共通点及び差異点の個別評価
(オ)意匠全体としての類否判断
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https://gyazo.com/b2ed6cbd18db701a79726c2759278367
https://gyazo.com/ad71c19c882be9a39b858bb134c2f339
https://gyazo.com/dadbc6fd858a74fc9db44cb0cde9c729
https://gyazo.com/787b0c47f321ff73a272cb0bc030fbcc
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物品の形態が、その物品の機能実現のために必然的でそれ以外取り柄ない形態であった場合、意匠としての評価は低くなり、自由度が高い場合は意匠的に評価されるべきであろう。
https://gyazo.com/868499236e26bfaab76f827caf3bfdde
時間が許せば、この例で考えてみよう。
https://gyazo.com/19816576c05f44c9faec112dbce2e72e
https://gyazo.com/38575036a33677cf60b84b5b13f4ba36
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質問:意匠法3条1項3号の公然知られ、頒布された刊行物に記載された意匠に類似する意匠と、3条2項でいう公然知られ、頒布された刊行物に記載された形状等又は画像に基づいて容易に創作できた意匠との差異を説明しなさい。
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